50代後半になると、ふとした瞬間にこう感じることがあります。
「この先、何を楽しみに生きていけばいいのだろう」
子育ての終わり、仕事の変化、体の不調。
これまでの役割が少しずつ変わっていく中で、心にぽっかりと穴があいたような感覚になることもあります。
しかし一方で、同じ年代でも新しい一歩を踏み出し、イキイキとした日常を取り戻している人もいます。ここでは、50代後半から変化を経験した方にお話をお伺いしました。
■大葉さん(58歳男性/東京、仮名)の場合
役割を失ったあとに見つけた「無理をしない働き方」

私の勤めている会社は役職定年制度があるわけではないのですが、
56歳で人事制度の一環でそれまでの管理職からスペシャリスト職に変わりました。
年収は若干下がり、部下もいなくなりました。
それまでチームをまとめる役割だったのが、個人での活動が主になり、
会社に行っても、どこか居場所がないような感覚でした。
会社の中での主な会話相手は年下の上司でしたが、
私の扱いに困っていたのでしょう、
1on1は上司ぼ忙しさを理由にキャンセル続きでほとんど実施してくれませんでした。
休日は何をするでもなくテレビを見て過ごし、
「このまま定年まで過ごすのか」と考えると、先が見えない不安がありました。
57歳のとき、私の会社も副業がOKとなり、
元同僚から「ベンチャー企業の相談に乗ってみないか」と声をかけられました。
軽い気持ちで引き受けたのですが、これが思った以上に難しいものでした。
最初の打ち合わせでは、これまでと同じ感覚で話してしまいました。
経験をもとにアドバイスをしているつもりでしたが、相手の反応があまり良くありません。
後から率直に言われたのは、
「少し上から目線に感じる」
「話が抽象的で、どう動けばいいか分かりにくい」
というものでした。
正直、かなりショックでした。
それまで自分のやり方で評価されてきたつもりでしたが、
それは会社という環境や肩書きがあったから通用していただけなのかもしれない、と気づかされました。
でも、情けないことに、当時の私はどのように変えていけば良いのか分かりませんでした。
試行錯誤したものの最初の数ヶ月は全く手応えがなく、
「自分には向いていないのではないか」と感じることも何度もありました。
それでも、せっかくもらった機会なので、やり方を変えて、反応を見る、再度やり方を見直すということを繰り返しました。
まず意識したのは、「教える」のではなく「一緒に考える」ことでした。
相手の話を最後まで聞き、すぐに結論を出すのではなく、何に困っているのかを整理するようにしました。
また、「次に何をすればいいか」をできるだけ具体的に伝えるようにしました。
口頭だけでなく、資料にまとめて渡すようにしました。
話し方も見直しました。
専門用語を減らし、相手に伝わる言葉を選ぶことを意識しました。
そうしたことを続けていくうちに、少しずつ反応が変わってきました。
「話しやすい」
「具体的で助かる」
少しずつ、そう言ってもらえることが増え、継続して依頼をもらえるようになりました。
今では、会社の仕事に加えて、週に数日だけ副業として外部の仕事をしています。
最近では、若い経営者にアドバイスをする仕事の依頼が増えてきました。
以前のような「有名な会社の肩書き」はありませんが、
「まだまだ自分は役に立てる」と感じられるようになったことが、一番大きな収穫です。
■ 山田さん(56歳女性/神奈川、仮名)の場合
「誰とも話さない日々」から抜け出した、小さなつながりづくり

数年前に離婚し、子どもも独立して、家には私一人だけの生活です。
パートの仕事はしていましたが、週に数日だけ。
それ以外の日は、ほとんど家で過ごしていました。
最初のうちは気楽でいいと思っていましたが、だんだんと違和感を覚えるようになりました。
気づけば、1日誰とも話さない日が増えていました。
テレビをつけていても、ただ音が流れているだけで、心は満たされません。
特に夕方から夜になると、
「このままずっと一人なのだろうか」
という不安を強く感じるように。
ある日、スーパーの掲示板で”街歩き(ウォーキング)サークル”の募集を見かけました。
正直、最初は参加する気にはなれませんでした。
もともと、そんなにおしゃべりでも社交的な性格でもないため、
自分一人だけで知らない人の中に入るのが怖かったですし、今さら人間関係を作るのも面倒だと感じていました。
それでも、「このままではもっと外に出なくなるかもしれない」と思い、数日迷った末に参加することにしました。
一大決心で参加を決めた割に、参加初日は、ほとんど誰とも話すことができませんでした。
年齢層は私よりも少しだけ年上と見られる方が多く、
周りの人たちはすでに仲が良さそうで、自分だけ浮いているように感じました。
歩いている間も一人でポツンと行動となってしまい、
「やっぱり来なければよかった」と何度も思いました。
それでも最後まで参加したのは、「ここでやめたら元に戻る」と感じたからでした。
帰り際に、「また来週も来ますか?」と声をかけてもらいました。
その一言で、「もう一度だけ行ってみよう」と思えました。
2回、3回と参加するうちに、少しずつ会話が増えていきました。
同じように一人暮らしの人や、時間を持て余している人が多いことも知りました。
「自分だけではなかった」と思えたことが、安心につながりました。
最初は月に1回だけと決めて参加していましたが、慣れてくると自然と回数が増えていきました。
無理をせず、自分のペースで続けることができています。
参加費も月に千円程度で、大きな負担ではありませんでした。
やがて、ウォーキングのあとにお茶をするようになり、
「来週はどこに行こうか」と話す時間が楽しみになりました。
ウォーキング中に写真を撮り、動画や写真を共有するようになり、それが新しい趣味にもなりました。
気づけば、明日はこれをしよう、来週は何をしよう、と、自然と先のことを考えるようになり、
前向きな気持ちで毎日を過ごすようになったと感じています。
「誰かとつながっている」という安心感で、自然と笑顔になれるようにもなりました。
