「58歳スポットワークでどこまで稼げるか」を実際に試してみる
「本業の仕事はある。でも、毎日忙しいわけではない」
58歳になった今、私が感じているのが、この微妙な時間の余り方だ。
私はフリーランスのライターの仕事をしている。
原稿を書いたり、取材をしたり、企画を考えたりする仕事なので、会社員時代のように毎朝決まった時間に出社する必要はない。
一方で、仕事が毎日びっしり入っているわけでもない。
原稿を書き終えた午後に数時間空くこともあるし、次の仕事まで丸一日空いてしまうこともある。
その時間を使って、何か別の仕事ができないか。
そう考えて以前から気になっていたのが、スキマバイトサービスの「タイミー」だった。
タイミーは、働きたい時間と人手が必要な時間をマッチングするサービス。履歴書や面接なしで仕事を選んで働けるのが特徴であり、面接苦手な陰キャの筆者にとっては魅力的だ。
そこで今回は、少し無謀とも思える実験をしてみることにした。
「58歳のライターが、1カ月でタイミー100時間働いたら、いくら稼げるのか?」である。
58歳、スポットワークできるのか?
最初に、自分のスペックを整理しておきたい。
58歳男性。本業はライター。
人見知り。細かい作業は苦手。パソコンに向かって原稿を書くことには慣れているが、同じ姿勢で一日中仕事をするのは、最近少し疲れる。
むしろ、体を軽く動かすような軽作業系の仕事のほうが好きだ。
ただし、体力にはそれほど自信がない。
若い頃なら「引っ越し作業4時間」などにも挑戦したかもしれないが、今は無理をすると翌日に確実に響き、本業への影響が出る。
つまり、私がタイミーの仕事を選ぶ際の条件はかなりはっきりしている。
・人と話し続ける仕事は避ける
・細かい作業が延々と続く仕事は避ける
・重すぎる荷物を扱う仕事は避ける
・4時間程度で終わる仕事を中心にする
・できれば体を動かす仕事を選ぶ
・本業の予定が入っても調整できるよう、特定の曜日に固定しない
今回の企画では、同じ仕事を継続して受けるのではなく、その日限りの仕事を一つずつ経験することにした。
一つの仕事は最大4時間。
1日に短時間の複数の仕事を掛け持ちすることもある。
まずは「4時間の仕事」を探してみる
実際にタイミーの仕事を見てみると、想像していた以上に種類が多い。
公式にも、倉庫での仕分けやピッキング、スーパー、コンビニ、飲食店のホール・洗い場、イベント、清掃など、さまざまな仕事が掲載されている。
私が最初に注目したのは「軽作業」だった。
「軽作業」という言葉から、あまり体力を使わない仕事を想像していたのだが、実際には仕事内容によってかなり違う。
商品を棚から集めるピッキング。
荷物を仕分ける作業。
商品の品出し。
倉庫内での荷出し。
こうした仕事は、人と会話し続ける必要がない。
これは人見知りの私にはありがたい。
一方、4時間ずっと立ちっぱなしになる仕事もある。
「軽作業だから楽」とは限らない。
そこで今回は、時給だけでなく、
「58歳の自分が4時間働いても翌日体に響かないか」
を重視することにした。
1カ月100時間。25件の仕事を経験する
今回のチャレンジで設定した目標は100時間。
仮に1件4時間なら、単純計算で25件だ。
25件という数字を見た瞬間、「これ、結構大変じゃないか?」と思った。
週5日勤務なら普通の会社員と変わらない。
ただし、今回は1日8時間働くわけではない。
午前中にライターの仕事をして、午後から4時間。
あるいは午前中にタイミーで働いて、午後に原稿を書く。
場合によっては、短時間の仕事を2件組み合わせる。
そんな働き方を想定した。
タイミーの大きな特徴は、自分が働きたい時間帯に仕事を探せることだ。公式サイトでも「好きな時間にすぐ働ける」ことをサービスの特徴として紹介している。
とはいえ、実際にやってみると「好きな時間に必ず仕事がある」というわけではない。
希望する時間帯、場所、仕事内容、時給。
これらすべての条件が一致する仕事は、それほど多くない。
いざ!仕事
1件目:倉庫の仕分け
集合場所に着くと、すでに数人が集まっている。
周囲を見ると、自分より若そうな30代くらいと思われる人が多い。
少しだけ肩身が狭い。
担当者から簡単な説明を受け、作業場所へ。
仕事内容は、トラックからおろされた商品を仕分けて決められた場所に運ぶというものだった。
「思っていたより単純だな」というのが第一印象。
ただし、思っていたよりも倉庫の中は広い。必然的歩く距離も多くなる。
そして、ずっと立ちっぱなしだ。
最初の1時間は余裕だった。
2時間経つと、少し足が重くなってきた。
3時間を過ぎると、
「あと1時間か……」
と時計を見る回数が増えた。
それでも、黙々と作業するので人見知りの私には合っている。
仕事中に必要以上の会話をすることもない。
休憩時間に隣の人から、「今日初めてですか?」と声をかけられた。
「はい。こういう仕事自体初めてです」と答える。
それだけの会話だった。
しかし、それだけでも少しホッとした。
仕事が終わると、担当者から簡単に声をかけられた。
「ありがとうございました」
私も「ありがとうございました」と頭を下げて職場を出る。
たった4時間。でも、妙な達成感があった。
そしてスマートフォンを見る。
もう報酬が反映されている。
当たり前のことなのだが、少し不思議な感覚だった。
1,310円✖️4時間=5,240円
2件目:スーパーの品出し
次に選んだのはスーパーの品出し。
前回の倉庫作業では、思った以上に足が疲れた。
こで今回は、もう少し軽めの仕事を選んだ。
仕事内容は商品の品出しが中心。
スーパーの担当者さんから、
「この商品はこちら」
「この順番で」
「終わったら次をお願いします」
と簡単な説明を受ける。
難しくはない。
ただ、商品によっては意外と重い。
飲料ケースなどを持つと、
「やっぱり58歳だな」と感じる。
若い頃なら何とも思わなかった重さが、今は腰にくる。
下の棚に並べるためにしゃがむことも多く、膝にもくる。
一方で、前回より人との距離が近い。
売り場にいるので、当然お客さんからも声をかけられる。
「ハンドソープはどこですか?」
と聞かれて一瞬、固まった。
私はその店の従業員ではない。
「申し訳ありません、今日初めてなので……」
と答えると、近くのスタッフを呼んだ。少し恥ずかしかった。
しかし、それほど大きな問題ではない。
仕事が終わる頃には、少しずつ慣れてきた。
1,250円✖️4時間=5,000円
3件目:清掃の仕事
3件目は施設の清掃。
これは意外と自分に合っていた。
決められた場所を順番に掃除していく。
人と話す必要もほとんどない。
そして何より、「やったことが目に見える」のがうれしい。
掃除前と掃除後で明らかに違う。
ライターの仕事では、文章を書き終えても、
「本当にこれでよかったのだろうか」と考えてしまうことがある。
清掃は違う。
汚れていた場所がきれいになっている。
それだけで仕事をした実感がある。
一緒に働いた人は、明らかに歳上だったが、年齢のことを特に気にしている様子はなかった。
仕事がきちんとできれば、それでいい。
そんな雰囲気だった。
1,300✖️4時間=5,200円
4件目:飲食店の洗い場
「人見知りなら接客より洗い場のほうがいいだろう」
そう考えて申し込んだのが飲食店の洗い場だった。
ところが、これは予想以上に忙しかった。
限られた広さの洗い場に次々に食器が運ばれてくる。
料理で使用したフライパンや鍋も山積み。
洗って、すすいで、片付ける。
洗って、すすいで、片付ける。
洗って、すすいで、片付ける。
一段落する暇がない。
しかも、周囲ではスタッフが忙しく動いている。
「次、お願いします!」
「これ運んじゃって!」
などと声が飛び交う。
人見知りの私にとっては、仕事内容よりも、このスピード感のほうがきつかった。
4時間が長い。
終わったときには、かなり疲れていた。
帰り道、「家でもろくに料理経験がない自分にとって、この仕事のマッチ度は低かったな」と思った。
ここで、仕事選びの基準が一つ増えた。
「人と話すのが苦手」だけではなく、「周囲のスピードに合わせ続ける仕事も苦手」
ということだ。
1,250円✖️2時間=2,500円
5件目:イベントスタッフ
一方で、意外に楽しかったのがイベント関連の仕事だった。
会場の設営や片付けなど、体を動かす仕事。
イベント前なので、スタッフも忙しくい。
ただ、仕事の内容がはっきりしている。
「配布物が入った段ボールを受付に運んでください」
「この椅子をこの線に沿って並べてください」
「案内板をこことここに設置してください」
といった指示に従って動けばいい。
普段は文章を書く仕事なので、こういう単純な肉体労働をすると頭がリセットされる。
パイプ椅子を何百と並べる仕事は無になってできて、完成した時の達成感は爽快だった。
一緒に働いた人とも、「今日は暑いですね」、「結構重いですね」程度の会話。
これくらいなら苦にならない。
むしろ、仕事が終わった後は爽快だった。
ただし、翌日は筋肉痛。
58歳の体は正直だ。
1,450円✖️4時間=5,800円
結論、いくら稼げた?
この企画は1ヶ月で100時間働いていくら稼げるかという企画なのだが、結局1ヶ月で73時間しか稼働できなかった。稼ぎは、73時間の稼働で97,920円。稼ぎの金額としては決して悪くない。
100時間達成できなかったのは、毎日アプリで仕事を探すということをルーティンにして継続することができなかった私の怠惰な性格が敗因。
タイミーで職を探し収入を得ることに対する利便性はとても高く、文句は一切ない。
シニアでも十分使えるサービスだし、シニアが働ける場もたくさんある。
事前に私のChatGPTと企画の会話をした際には、
「平均時給1330円✖️100時間=133,000円稼げますよ。悪くないですね。」としれっと答えた。
だが、実際、行動をするのはそんなに簡単ではなかった。少なくとも私には。


