今回のお悩み
私は50歳の独身女性です。昨年末に会社を退職し、現在は東京で再就職活動をしています。
仕事がなかなか決まらず、不安な毎日を過ごしていた矢先、地方で暮らす母が脳梗塞で倒れ、入院しました。
退院が決まった際、母から泣きながら「お父さんには介護は無理だから、あなたが介護してほしい」と言われました。
父からも、「お母さんがかわいそうだろう。俺も体がきつい」「もう東京で十分働いたんだから、地元へ戻ればいい」「地方にも仕事はあるだろう」と言われ、私が実家へ戻ることを当然のように求められています。
実際に地元でも仕事を探しました。しかし求人は非常に少なく、車通勤が前提の仕事ばかりです。私は運転免許を持っておらず、生活そのものが成り立つイメージが持てません。
母の入院費や、自宅を介護しやすくするための改築費用は、私の貯金から支払いました。
それでも両親は、これから先も生活面も経済面も私が支えることを期待しているようです。
私は市役所へ相談し、要介護認定を受け、ケアマネジャーや訪問サービス、配食サービス、見守りサービス、リハビリなどを手配しました。しかし、父は「他人に頼る必要はない」と言って、ほとんどのサービスを断ってしまいました。
少し距離を置こうと実家へ帰る頻度を減らしたところ、母から毎日のように電話がかかってきます。
「親を見捨てるの?」
「私はもう生きていけない。」
泣きながらそう言われるたびに、胸が締め付けられます。
兄が一人いますが、昔から両親との関係が悪く、この問題には一切関わっていません。両親も兄には何も頼ろうとはしていません。
どうして私だけが、ここまで背負わなければならないのでしょうか。
親を助けたい気持ちはあります。
でも、このままでは私自身の人生がなくなってしまいそうで苦しいです。
回答
ご相談を読んで、まず最初にお伝えしたいことがあります。
あなたは、もう十分すぎるほど頑張っています。
仕事を失った不安を抱えながら、母親の入院に対応し、介護の準備を進め、役所へ相談し、介護保険の手続きを行い、お金まで負担してきました。
「何もしていない」のではありません。
むしろ、家族の中で一人だけが責任を背負い続けています。
「親孝行」と「人生を犠牲にすること」は違います
日本では昔から、「親の面倒は子どもが見るもの」という価値観や「子どもに見てもらいたい」という希望がみられます。
しかし今は、高齢化が進み、親が90歳近くまで生きる時代です。
50代の子どもには、自分自身の生活も、老後の準備もあります。
親を支えることと、自分の人生を手放すことは同じではありません。
介護は短距離走ではなく、いつ終わるか分からない長距離走です。
最初から一人で抱え込んでしまえば、途中で心も体も折れてしまいます。
あなたが悪いのではなく、「仕組み」が止まっている
とても印象に残ったのは、あなたが介護サービスを整えたにもかかわらず、お父様が断ってしまったという点です。
あなたが広い視野を持って家族を支えようとしているのに、
家族だけで介護を抱えようとする狭い考え方が、支援を止めてしまっているのです。
介護保険制度は、家族だけで介護を抱え込まないためにつくられました。
利用できる制度を使うことは、決して親不孝ではありません。
もしお父様がサービスを拒否しているのであれば、一人で説得を続けるのではなく、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ状況を率直に伝えてください。
専門職から説明してもらうことで、受け入れてもらえるケースは少なくありません。
「親を見捨てるのか」という言葉に苦しまないでください
この言葉は、とても強い力を持っています。
言われるたびに、「私が悪いのではないか」と感じてしまう人は少なくありません。
でも、その言葉は現実とは大きく異なります。
あなたは親を見捨ててはいません。
介護保険の手続きをし、費用も負担し、何度も実家へ足を運び、できる限りのことをしてきました。
それでも「もっと」「まだ足りない」と求められ続ければ、誰でも苦しくなります。
親にも、不安や孤独があります。
だからこそ、子どもにしがみついてしまうことがあります。
しかし、その不安を一人の子どもだけが引き受け続けることはできません。
「長女だから」「娘だから」という役割から自由になっていい
ご相談文からは、「私がやらなければ」という思いが強く伝わってきました。
けれど、本当にそうでしょうか。
お兄様が関わらないこと、お父様が介護サービスを断ること。
それらは本来、あなた一人が背負うべき責任ではありません。
家族にはそれぞれの事情があります。
だからこそ、責任も一人だけに集中させてはいけないのです。
あなたの人生も、守るべき大切な人生です
50歳は、人生をやり直すには決して遅い年齢ではありません。
今は再就職活動という大切な時期でもあります。
もしここで東京での生活をすべて手放してしまえば、数年後に介護が終わったとしても、仕事も収入もあなた自身の老後資金も失ってしまう可能性があります。
それは、ご両親にとっても望んでいた未来ではないはずです。
介護は「できることをする」。
できないことまで背負う必要はありません。
東京で仕事を探しながら、必要なときに実家へ帰る。
介護サービスや地域の支援を活用する。
それも立派な介護です。
最後に。
心理学には、「自分を犠牲にして他人を支え続けると、やがて支える力そのものが失われる」という考え方があります。
あなたが倒れてしまえば、ご両親を支える人は誰もいなくなります。
だからこそ、自分の生活や仕事を守ることは、決してわがままではありません。
どうか、「私の人生も守っていい」と、自分に許可を出してください。
その一歩が、これから先も親を支え続けるための、本当の意味での土台になるのだと思います。

