成年後見制度の現実

終活

― 親のお金を守る制度なのか、それともリスクなのか ―
高齢の親のお金の管理や、おひとり様の老後対策としてよく紹介されるのが
成年後見制度です。
認知症などで判断能力が低下した場合、後見人が、
  ・銀行手続き
  ・契約
  ・財産管理
を代理して行う制度です。

しかし最近は、後見人による財産の着服、一度利用すると財産を自由に使えない、家族でもお金を動かせなくなるなどのデメリットもよく指摘されています。

この記事では、以下を整理します。

  • 成年後見制度の現状
  • 実際に起きているトラブル
  • 制度の課題
  • 利用せざるを得ない場合の注意点

成年後見制度の利用はどのように決まるのか

成年後見制度は、家族や行政が勝手に決められるものではありません。
利用するためには 家庭裁判所への申立てが必要です。
申立てができるのは、本人、配偶者、子供などの親族、市区町村長(身寄りがない場合など)です。
申立てが行われると、家庭裁判所は、本人の判断能力、財産の状況、家族関係などを確認します。
その際には、医師の診断書、親族への照会、鑑定などを必要に応じて行います。

そのうえで裁判所が、成年後見、保佐、補助のどの制度を利用するかを決定し、
誰を後見人にするかも裁判所が決めます。

つまり成年後見制度は
家族が自由に決める制度ではなく、家庭裁判所が管理する制度です。

そのため制度が始まると、本人の財産管理は後見人が行い、
家庭裁判所の監督を受けることになります。

成年後見制度の利用状況

日本では高齢化の進行に伴い、制度の利用は増えています。
最高裁の統計によると

  • 成年後見制度の利用者:約25万人以上(2026年時点)
  • 年間申立件数:約4万件以上

となっています。
制度自体は、認知症などで、お金の管理ができない、契約が理解できない
といった人を保護するために作られました。

実際、制度の利用理由として最も多いのは
預貯金などの管理や解約のためとされています。

現在起きている主な問題

成年後見制度は必要な制度である一方、いくつかの問題が指摘されています。
主なものは次の4つです。

  • 財産を自由に使えなくなる
  • 後見人による不正
  • 家族が関与できなくなる
  • 制度の利用をやめられない

順番に見ていきます。

① 本人のお金が自由に使えなくなる

成年後見制度が始まると、財産は基本的に
後見人が管理することになります。
例えば、

  • 不動産の売却
  • 大きな支出
  • 贈与

などは、原則として
家庭裁判所の許可が必要になることがあります。

そのため、家族旅行、子や孫への贈与、相続対策なども、
自由にはできなくなるケースがあります。

この点は制度の大きな特徴であり、同時に 大きな制約でもあります。

② 後見人による横領・不正

成年後見制度の問題としてよく報道されるのが
後見人による財産の着服です。

裁判所の統計では

  • 成年後見関連の不正事件:年間約300件

が報告されています。また、被害額は数億円規模に及ぶケースもあります。
制度上、後見人は、銀行口座、不動産、年金などを管理するため、
財産に強い権限を持っています。

そのため、不正が起きると被害額が大きくなりやすいという問題があります。

③ 家族が関われなくなるケース

昔は、家族が後見人になるケースが多かったのですが、現在は状況が変わっています。

2023年の統計では

  • 親族が後見人:約18%
  • 弁護士・司法書士など第三者:約82%

となっており、多くが専門職が後見人になるという状態です。
これにより、
  ・家族でもお金を動かせない
  ・家族の意向が反映されない
という不満が生じることがあります。

④ 一度始めるとやめられない

成年後見制度は、本人が亡くなるまで続くのが原則です。
途中で、家族がやめたいと申し出たり、不便だから戻したいと思っても、
簡単に終了することはできません。

この「不可逆性」も制度の大きな課題とされています。

こうして成年後見制度が始まると、本人の財産管理は後見人の権限となり、
家族でも自由にお金を動かすことができなくなる場合があります。

なぜ「市役所が後見申立て」をできるのか

最近増えているのが市区町村が後見申立てを行うケースです。
2024年の統計では、後見申立ての中で
市区町村長による申立てが約23.9%
と最も多くなっています。

理由は、
  ・身寄りのない高齢者
  ・家族が関与できない
  ・高齢者虐待
などのケースです。

つまり、家族がいない高齢者の保護という意味で行政が関与しています。

おひとり様(独身・単身者)の場合の課題

特に問題になるのがおひとり様の老後です。
身寄りがない場合、

  • 入院手続き
  • 施設入所
  • 支払い

などの手続きを手助けする人がいません。

身寄りがない高齢者の場合、もう一つ大きな問題になるのが
入院や施設入所の際の保証人です。

多くの病院や介護施設では、入院や入所の際に
  ・緊急時の連絡先
  ・身元保証人
  ・支払いに関する保証人
などを求められることがあります。
家族がいる場合は、子ども、兄弟、親族が保証人になるケースが多いですが、
おひとり様の場合は その役割を担う人がいない場合があります。

ここで誤解されやすいのが成年後見人の役割です。
成年後見人は、財産管理や契約の代理などを行う立場であり、
本人の債務を保証する立場ではありません。

そのため多くの場合、入院保証人や施設入所の身元保証人になることはありません。

おひとり様(独身・単身者)の現実的な老後対策

おひとり様にとって最大の課題は「信頼できる受託者(=財産管理を任せる人)がいるかどうか」です。

家族信託を使う場合は、財産を任せられる親族(兄弟姉妹、甥・姪など)がいる場合に有効です。
ただし受託者には大きな責任が伴うため、関係性と本人の意向の確認が欠かせません。

成年後見制度の方が適している場合としては、身寄りが少ない・いないケースが多いです。
弁護士や社会福祉士などの専門職後見人を立てることができるため、家族がいなくても制度を利用できます。また、財産管理だけでなく、介護施設の入退所などの身上保護も後見人が担ってくれる点が大きな安心材料です。

おひとり様には、上記以外に、以下の私的な契約の組み合わせが現実的です。

  • 任意後見契約:元気なうちに信頼できる人(友人・専門家)を後見人候補として公正証書で指定する
  • 財産管理委任契約:判断能力があるうちの日常的な財産管理を委任する
  • 死後事務委任契約:死後の手続き(葬儀・行政手続き等)を委任しておく

この3つをセットで準備しておくと、認知症になる前から亡くなった後まで、切れ目なくカバーできます。専門家(司法書士・弁護士・行政書士)への早めの相談をお勧めします。

成年後見制度でできることとできないことを理解する

成年後見制度は財産保護の制度です。
そのため
  ・相続対策
  ・節税
  ・贈与
などは基本的にできません。
また、後見人は、本人の債務を保証する立場ではないため
  ・入院の身元保証
  ・施設入所の保証人
などを引き受けることも原則としてありません

まとめ

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人を守る制度
ですが、同時に次のような課題もあります。

  • 財産を自由に使えなくなる
  • 後見人による不正
  • 家族が関与できない
  • 一度始めるとやめられない

特に、おひとり様の老後では、利用せざるを得ないケースも多いため、
制度の仕組みを理解したうえで

  • 任意後見
  • 信頼できる後見人の選択

などを慎重に考えておくことが重要です。

参考・参照

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