今回のお悩み
54歳の女性です。
私は子供の頃から、人との関係を深めることが苦手です。
人と知り合っても、どのくらいの距離感で接すればいいのか、どの程度まで個人的な話をしていいのかがわかりません。
特に、自分の気持ちを話したり、相手の気持ちを聞いたりすることが苦手で、知り合いから友人へと関係を深めていくことができません。
一度結婚した経験がありますが、結婚生活の中でも、自分の意思をうまく伝えたり、夫の気持ちを聞いて理解したりすることができませんでした。そのことも離婚に至った理由の一つだったと思っています。
仕事上の人間関係でも同じでした。
仕事に必要な会話はできますが、仕事を離れても付き合うような人間関係を築くことができず、事務的な関係に終わってしまいます。
50代になってふと気づくと、頼れる仲間や先輩がいないだけでなく、私を頼ってくれる人もいません。
仕事を離れて一人になった今は、以前にも増して心細さを感じています。
趣味のフラワーアレンジメントやヨガスクールに通っているので、人と接する機会はあります。でも、挨拶やちょっとした会話をするところから先には進めません。
以前の会社の先輩とは、年に数回、一緒に食事をします。ただ、その食事も私から声をかけて、私が予定や場所を決めてお誘いしているものです。先輩から誘ってくれることはありません。積極的に会いたいとは思われていないように思います。
このままでは、いくらスクールやサークルなどに参加して人と接する機会を増やしても、人間関係を築くところまで発展しないのではないかと思っています。
以前、職場の先輩に仕事について相談した際、自分の心情を少し話したことがあります。そのとき「重いね」と言われたことがあり、それ以来、どこまで自分の話をしていいのか、ますますわからなくなりました。
どうすれば、人との関係を少しずつ深めていけるようになるのでしょうか。
回答
ご相談ありがとうございます。相談者さんは、「人付き合いが苦手」というよりも、人との距離を縮めるための加減がわからず、慎重になっているように拝見しました。
これは50代からでも変えていくことができます。
ただ、焦らず、いきなり深い関係を作ろうとしないことです。
人間関係には「知り合い」と「親しい友人」の間がある
人間関係を考えるとき、
「挨拶だけする人」と「何でも話せる友人」
の二つしかないように考えてしまうと、距離を縮めることが難しくなります。
実際には、その間にたくさんの段階があります。
たとえば、
「挨拶をする」
↓
「天気や近況について少し話す」
↓
「趣味について話す」
↓
「休日の過ごし方を聞く」
↓
「一緒にお茶をする」
↓
「最近あったことを少し話す」
↓
「困っていることを相談する」
というように、関係は少しずつ変化していきます。
一度の会話で一気に距離を縮めようとしないことです。
「今日は少しだけ相手のことを知る」くらいで十分です。
「深い話」をする前に、「少しだけ自分を開く」
ご相談の中に、「どこまで個人的な話をしていいのかわからない」とありますが、この場合は、いきなり悩みや感情を話すのではなく、まずは「少しだけ個人的な情報」を出してみる方法を試してみてはいかがでしょうか。
例えばヨガスクールなら、
「最近、運動不足だったのでヨガを始めたんです」くらいの会話から。
「私も運動不足解消のために始めたんですよ」と返してくれたら、
「そうなんですね。ヨガの後って、体が軽くなってスッキリませんか?」
と少しだけ会話を続けてみる。
さらに何度か話すようになったら、
「休みの日もヨガに来てますか?」と聞いてみる。
そこで相手が自分の話をしてくれたら、自分のことも少し話す。
この繰り返しです。
「深い話をする」のではなく、「小さな個人的な話を少しずつ交換すること」で関係構築を試してみてください。
「質問すること」は、相手に興味を持っているというサインになる
人との関係を深めるのが苦手な人は、「自分から何を話せばいいのかわからない」と考えがちです。
もしくは「自分のことをわかってほしい」と考えて自分のことばかり話している場合もあります。
「フラワーアレンジメントはいつ始められたんですか?お上手ですね。」
「他にも何か習い事をしていますか?」
「この近くでおすすめのお店ありますか?」
この程度の軽い質問をしてみましょう。
そして相手の答えに対して、
「へえ、そうなんですね」だけで終わらせず、
「どういうきっかけで始めたんですか?」
「家でもご自身でお花のアレンジメントされていますか?」
など、もう一歩だけ質問してみます。
会話というと「自分が何か話さなければ」と考えてしまいますが、相手の話を聞くことも立派なコミュニケーションです。
「重い」と言われた経験を、必要以上に引きずらなくていい
以前、先輩に心情を話したところ「重いね」と言われたことが、今の相談者の方にとって大きなブレーキになっているのだと思います。
確かに、相手との関係がまだ浅い段階で、非常に深刻な悩みを長時間話すと、相手が受け止めきれないことはあります。しかし、それは、「自分の気持ちを話してはいけない」という意味ではありません。
考慮すると良いのは、相手との関係性と話す内容の深さを合わせることです。
「最近ちょっと仕事のことで悩んでいて」という程度の話をしてみる。
「どうしたの?」と聞いてくれたら、もう少し話す。
逆に、「そうなんだ、大変だね」程度で話が終わったら、そこで止める。
このように、相手の反応を見ながら少しずつ深くするのです。
会話には、いわば「水深」があります。最初から深いところまで入らなくてもいいということを知っておきましょう。
「誘う側」ばかりでも、それだけで関係が一方通行とは限らない
以前の会社の先輩との関係についても、「いつも自分から誘っている」ということを気にしすぎなくてもいいと思います。人には、それぞれ人付き合いのスタイルがあります。自分から誘うことが苦手な人もいます。誘われれば喜んで会うけれど、自分から予定を決めることはしない人もたくさんいます。
もちろん、何度誘っても相手が明らかに迷惑そうだったり、何度も断ったりするのであれば、距離を置く必要があります。しかし、誘えば来てくれて、一緒に食事をして、会話を楽しめているのであれば、その関係には意味があります。
「私ばかり誘っている」という事実だけで、「私は人から求められていない」と考えなくてもいいでしょう。
「頼れる人」だけでなく、「ちょっと頼れる人」を作る
相談者さんは、「頼れる仲間や先輩がいない」とありますが、「何でも相談できる親友」をいきなり作ろうとすると、ハードルが高くなります。
まずは、
「この人にはフラワーアレンジメントのことを聞ける」
「この人にはヨガのことを聞ける」
「この人とはランチに行ける」
「この先輩には仕事の話を少し相談できる」
というような、小さなつながりを複数持つことを目指してみてください。一人の人にすべてを求める必要はありません。
50代以降の人間関係では、学生時代のような「何でも話せる親友」が必ずしも必要なわけではありません。
趣味の仲間、昔の仕事仲間、近所の知人、たまに食事をする人、困ったときに連絡できる人。
そうした人が少しずつ増えていくことで、「一人だけれど孤立しているわけではない」という状態を作ることができます。
「頼られる人」になろうとしすぎなくてもいい
ご相談には「頼ってくれる人もいない」とありますが、人から頼られることは、必ずしも人間関係の深さを測るものではありません。
「この間教えてもらったお店、行ってみました。○○さんが好きだと言っていたお花が出てましたよ。」
このように、以前の会話を次の会話へと少しずつ重ねていくと、お互いの関心が積み上げられます。
無理に「必要とされる人になる」ことで人間関係を作るのではなく、お互いの関心を少しずつ積み上げた結果、頼られる場面につながっていくのです。
50代からなら、「3回会話する人」を作ることから始めてみる
相談者さんの場合、まず目標を小さく設定してみることをおすすめします。
例えば、フラワーアレンジメントやヨガで、
「一人の人と、3回続けて会話する」ことを目標にしてみてください。
1回目は挨拶だけ。2回目は少し雑談。3回目は前回の会話を覚えていて、「この前おっしゃっていた旅行、どうでした?」と話しかけてみる。
人との関係は、特別な会話によって突然深まるというより、「前にも話した」「また話した」という積み重ねによって少しずつ育っていくものだからです。
そして、相手からも話しかけてもらえるようになったら、次の段階として、
「よかったら今度、レッスンのあとにお茶しながらそのお話聞かせてもらえますか?」
と誘ってみてもいいでしょう。
断られたとしても、それは必ずしもあなた自身が否定されたわけではありません。予定が合わないだけかもしれませんから。
「人間関係が苦手な自分」を直すより、「小さなやり取り」を増やす
これまでの結婚生活や仕事上の人間関係を振り返って、「自分には人間関係を作る能力がない」と考えているのかもしれませんが、54歳までの経験を「これが自分の性格だから」と固定してしまうのはやめましょう。
人との関係には、性格だけではなく、経験や習慣も大きく関係します。
これまで「自分のことを話さない」「相手に踏み込みすぎない」というやり方で人と接してきたのであれば、これからはそこに少しだけ、「自分のことを話す」「相手のことを一つ聞く」「次に会ったときに前の話を覚えている」という行動を加えてみてください。
それだけで十分です。
人間関係は、何歳からでも作ることができますし、相談者さんと同じような悩みを抱える人はたくさんいます。
50代から作る人間関係は、若い頃の毎日学校で一緒に時間を過ごす友達とは異なります。
月に一度、あるいは数カ月に一度会って、「最近どう?」と話せる人がいるだけでも、人生の心細さは少し変わります。

