世界の50代 幸福度と不安の国際比較(男性編)

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10か国のデータから見えてきた「幸福」と「仕事への不安」のギャップ

日本の50代が抱えている不安や生活への満足度は、海外の50代と比べるとどのような特徴があるのでしょうか。

今回は、World Values Survey(世界価値観調査)Wave 7(2017-2022)のデータをもとに、50~59歳の男性に対象を絞り、日本、米国、英国、ドイツ、オランダ、オーストラリア、カナダ、韓国、ニュージーランド、シンガポールの10か国を比較しました。

数字を並べてみると、日本の50代男性には少し意外な特徴が見えてきます。

日本の50代男性は、生活に満足していないのか?

まず、生活満足度と家計満足度を10段階のスコアで比較してみます。

50代男性の生活満足度・家計満足度を国別比較したものです。
日本の50代男性の生活満足度は6.4。今回比較した10か国の中では低い水準です。
さらに他国と差が大きいのが家計満足度です。
日本は5.6で、ドイツ6.9、オランダ7.2、英国6.7などと比べると大きな差があります。

特に注目したいのは、生活満足度よりも家計満足度の低さです。

50代は、現役世代として働いている一方で、定年後の生活や年金、住宅ローン、親の介護、子どもの独立など、将来のお金について考え始める時期でもあります。そのため、現在の生活だけではなく、これから先の経済的な見通しが家計満足度に影響している可能性も考えられます。

ただし、今回のデータだけでは「日本の50代男性が経済的に苦しい理由」を特定することはできません。

「幸せ」と感じている人は8割を超えている

生活満足度や家計満足度では日本の数値が低かった一方、「自分は幸せだ」と感じている人の割合を見ると、印象が少し変わります。

日本の50代男性で「幸せ」と回答した割合は82.8%でした。
決して「幸せを感じている人が少ない」と単純に言える数字ではありません。

カナダは81.8%、ドイツは83.1%、シンガポールは83.5%です。一方、ニュージーランドは93.1%、オーストラリアは90.0%、英国は89.0%でした。

つまり、日本の50代男性は、生活満足度や家計満足度が比較的低い一方で、「幸せ」と感じている人は8割を超えているのです。これはどういうことなのでしょうか。
ここには、満足度と幸福感が必ずしも同じものではないことが表れています。

「健康」の自己評価には大きな差

上記のグラフでもう一つ目立つのが、健康状態です。

日本で健康状態を「非常に良い」または「良い」と回答した50代男性は39.2%でした。
今回比較した国では、韓国 89.5%、オーストラリア 77.2%、シンガポール 71.6%、オランダ 71.4%、英国 71.3%、カナダ 68.7%、ニュージーランド 66.7%、米国 66.5%、ドイツ 60.0%となっています。

日本の数字がかなり低く見えます。
ただし、ここは注意が必要です。
これは客観的な健康診断の結果ではなく、本人による健康状態の評価です。

「健康だと思うか」という質問への回答には、実際の病気の有無だけでなく、健康についての考え方や回答文化なども影響する可能性があります。
ですから、日本の50代男性は、海外より健康状態が悪いと、この数字だけから結論づけることはできません。
むしろ、「日本の50代男性は、自分の健康状態をどのように評価しているのか」という観点で見ることが重要です。

特徴的な「仕事に対への不安」

そして、今回の比較で最も特徴的なのが、仕事への不安です。

日本の50代男性で「仕事への不安」がある割合は80.0%でした。
韓国も74.2%と高いものの、それ以外の国では、ドイツ19.4%、オランダ15.7%、英国30.2%、米国38.6%、カナダ38.7%などとなっています。
今回比較した10か国の中で、日本の80.0%は非常に高い水準です。

ここから見えてくるのは、日本の50代男性にとって、仕事そのものが大きな不安要因になっている可能性です。

50代は、まだ現役で働いている人が多い一方、役職定年、定年、再雇用、転職、給与の変化など、働き方が大きく変わり始める年代でもあります。

また、「今の仕事を続けられるか」だけでなく、「今の収入を維持できるか」「60代以降も働けるか」といった将来への不安も考えられます。

ただし、今回の調査項目からは、仕事への不安の具体的な理由までは分かりません。

「仕事への不安」と「現金収入なし」は同じではない

ここで、もう一つ興味深い点があります。

日本の50代男性で「現金収入なし」と回答した割合は9.0%でした。
仕事への不安が80.0%なのに対して、現金収入なしは9.0%。ここには大きな差があります。

現在の収入がある人であっても、
「この先も今の仕事を続けられるだろうか」
「定年後はどうなるのだろうか」
「収入が減ったら生活できるだろうか」

といった将来への不安を感じている可能性があります。

今回の数字は、50代男性にとって「現在の生活」だけではなく、これから先の働き方や収入への見通しが重要なテーマになっていることを考える材料になります。

「必要な医療を受けられなかった」はわずか3%

もう一つ、グラフで日本の特徴として目立つのが、「必要な医療を受けられなかった」という回答の少なさです。
日本はわずか3.0%。米国22.2%、英国12.5%、オーストラリア15.6%、カナダ11.6%などと比較すると、低い数字です。
もちろん、この数字だけで各国の医療制度の優劣を判断することはできません。
調査対象者の所得、医療費負担、医療機関へのアクセス、質問への回答状況など、さまざまな要因が関係するからです。

ただ、日本の50代男性については、「医療を受けられない」という不安よりも、「仕事」への不安のほうが大きいという点は注目できます。

日本の50代男性を一言で表すと?

ここまでの数字を並べてみると、興味深い構図が見えてきます。

日本の50代男性は、以下のような結果でした。

生活満足度 6.4
家計満足度 5.6
「幸せ」 82.8%
健康状態が「非常に良い・良い」 39.2%
仕事への不安 80.0%
現金収入なし 9.0%
必要な医療を受けられない 3.0%

これらを組み合わせると、
幸せを感じながらも、仕事や将来について強い不安を抱えている
という姿が見えてきます。

もちろん、これは調査結果から読み取れる一つの特徴であり、すべての日本の50代男性に当てはまるわけではありません。しかし、「50代男性=人生に満足していない」と単純化するよりも、現在の幸福感と将来への不安が同時に存在していると考えたほうが、今回のデータには近いのではないでしょうか。

世界と比較することで見えてくる「日本の50代男性」今は大丈夫 でも、これからが不安

今回の10か国比較から、日本の50代男性について特に目を引くのは、次の4点です。

1.生活満足度、家計満足度は比較的低い

生活満足度6.4、家計満足度5.6。
特に家計満足度では、欧州の一部の国との差が目立ちました。

2.「幸せ」と回答する人は8割を超える

生活満足度が低めであっても、「幸せ」と回答した人は82.8%。
質素だが幸せであるといった感じでしょうか。

3.仕事への不安が非常に高い

仕事への不安80.0%という数字は、今回比較した10か国の中でも目立ちます。
50代男性にとって、現在の仕事だけでなく、これからの働き方や収入が大きなテーマになっている可能性があります。

4.必要な医療を受けられなかった割合は低い

保険制度の充実のおかげでしょうか。
必要な医療を受けれなかった割合は3.0%という低い数字で、今回比較した国の中でも低い水準でした。

不安への処方箋は「不安の正体」を確認すること

50代になると、将来の不安を完全になくすことは難しいかもしれません。
しかし、不安の正体を一つずつ確認することはできます。

仕事なら、

  • 何歳まで働くつもりなのか
  • 今の会社で働き続けるのか
  • 転職という選択肢はあるのか
  • 定年後にどんな仕事ができるのか

お金なら、

  • 定年退職以降に必要な生活費はいくらか
  • 年金はいくら受け取れるのか
  • 住宅ローンはいつまで残るのか
  • 貯蓄をどの程度取り崩すことになるのか

健康なら、

  • 今の健康状態をどう維持するか
  • 働き続ける体を維持するために何を変える必要があるか

このように、漠然とした「老後が不安」という状態から、具体的な問題に置き換えていくことができます。

日本の50代男性は「不幸」なのではなく、「これから」を強く意識している?

今回のデータから、日本の50代男性について一つの特徴が浮かび上がりました。
それは、「幸せ」と感じている人は8割を超えている一方で、仕事への不安も8割に達しているということです。

これは一見すると矛盾しているようにも見えます。
しかし、人生を考えてみれば、それほど不思議なことではありません。
今の生活に幸せを感じていても、「この先も同じ生活を続けられるのか」という不安を持つことはあります。

50代は、現在の生活を楽しむだけでなく、60代、70代、その先の人生について具体的に考え始める時期でもあります。
だからこそ、50代からの人生を考えるうえでは、「これからの人生をどうしたいのか」という視点も大切なのかもしれません。これから先が具体的にイメージできれば、具体的な行動に繋がり、不安が減少するのかもしれません。

次回は同じ方法で、50~59歳の女性について10か国を比較します。
仕事、家計、健康、幸福感――。
男性との違いにも注目して見ていきます。

調査について

本記事では、World Values Survey(WVS)Wave 7(2017-2022)のデータを使用し、50~59歳の男性を抽出して比較しています。
比較対象国は、日本、米国、英国、ドイツ、オランダ、オーストラリア、カナダ、韓国、ニュージーランド、シンガポールの10か国です。
国によって回答者数が異なるため、各国の数値は単純な国民全体の比較を示すものではありません。また、設問によって回答者数が異なる場合があります。

本記事の数値は、調査データから50~59歳男性を対象として集計したものです。

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