相続では、亡くなった人(被相続人)の財産だけでなく、借金などの負債も引き継ぐ可能性があります。
- 借金がどれくらいあるかわからない
- 財産がプラスかマイナスかわからない
という場合、そのまま相続すると大きな借金を相続する可能性もあります。
このようなときに利用できる制度が「限定承認(げんていしょうにん)」です。
この記事では
- 限定承認とは何か
- 相続放棄との違い
- 手続き方法
- メリット・デメリット
についてわかりやすく解説します。
限定承認とは
限定承認とは、相続で得た財産の範囲内でのみ、借金などの負債を支払う制度
のことです。
「相続した財産の範囲までなら借金を返すが、それ以上の借金は支払う必要がない」
という仕組みです。
例えば、父の遺産が以下の場合、
資産
預金 500万円
不動産 300万円
借金 1,200万円
通常の相続(単純承認)では、預金500万円や不動産300万円といった財産を相続すると同時に、
借金1,200万円も相続することになります。
そのため、
相続財産が800万円しかない場合でも、残りの400万円は相続人自身の財産から
返済しなければならない可能性があります。
限定承認の法律上の根拠
限定承認は民法で定められている制度です。
民法第922条では次のように規定されています。
”相続人は、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務および遺贈を弁済することを留保して、相続の承認をすることができる。”出典 法務省 民法(相続)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
相続の3つの選択肢
相続では、次の3つの方法から選ぶことができます。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 単純承認 | 財産も借金もすべて相続する |
| 限定承認 | 財産の範囲内で借金を支払う |
| 相続放棄 | 財産も借金もすべて放棄する |
相続放棄は、最初から相続人ではなかった扱いになるのに対し、
限定承認は、財産を整理したうえで相続する
という違いがあります。
限定承認が向いているケース
限定承認は次のような場合に検討されます。
①借金があるか分からない
例えば
- 事業をしていた
- 個人保証がある可能性がある
- 借入状況が不明
などの場合です。
②財産を残したい
相続放棄をすると、すべての財産を放棄することになります。
しかし限定承認なら借金を清算した後に残った財産を相続できます。
③自宅を残したい
被相続人の自宅を残したい場合もあります。
限定承認では、相続人がその不動産を買い取る制度があります。
これを、先買権(さきがいけん)と呼びます。
限定承認のメリット
限定承認には次のメリットがあります。
1 借金のリスクを回避できる
最大のメリットは、借金を背負うリスクを防げることです。
相続財産の範囲でしか負債を支払わないため、
自分の財産から借金を返済する必要がありません。
2 財産を相続できる可能性がある
相続放棄の場合、預金、不動産、株式などもすべて放棄します。
限定承認なら借金を整理したあとに残った財産を受け取ることができます。
3 自宅を守れる可能性がある
限定承認では、相続人が不動産を買い取る制度があります。
これにより実家を残すことができる場合もあります。
限定承認のデメリット
一方で、限定承認にはデメリットもあります。
1 手続きが非常に複雑
限定承認は、相続の中でも最も手続きが難しいと言われています。
⬛︎必要な手続き
- 家庭裁判所への申立て
- 財産目録作成
- 官報公告
- 債権者への通知
そのため、弁護士や司法書士に依頼するケースが多い制度です。
2 相続人全員の同意が必要
限定承認は、相続人全員で行う必要があります。
誰か1人でも反対すると限定承認はできません。
3 税金が発生することがある
限定承認では、みなし譲渡課税という税金が発生する場合があります。
これは、被相続人が亡くなった時点で
財産を売却したとみなされる制度です。
そのため譲渡所得税が発生する可能性があります。
限定承認の手続き
限定承認の手続きは次の流れになります。
①相続開始
被相続人が亡くなると相続が開始します。
②3か月以内に申立て
限定承認は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申立てを行います。
これを熟慮期間と呼びます。
③家庭裁判所へ申述
申立て先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
④財産目録の作成
相続財産を整理して財産目録を作成します。
⑤債権者へ公告
官報で債権者に対して請求を申し出るよう公告
を行います。
⑥借金の清算
相続財産を使って借金を清算します。
限定承認があまり利用されない理由
限定承認は法律上の制度ですが、
実際には利用されるケースは多くありません。
理由は次の通りです。
- 手続きが複雑
- 相続人全員の同意が必要
- 税金の問題
そのため多くの場合は、相続放棄が選ばれることが多いと言われています。
出典
法務省 民法(相続)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
裁判所 相続の限定承認
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html

