今回のご相談
53歳の独身女性です。離婚歴があります。子供はいません。
最近、勤めていた会社の経営不振により、退職することになりました。現在は失業手当で生活しながら再就職先を探していますが、50歳を過ぎてからの就職活動は厳しく、正社員として働くことは難しいのではないかと感じはじめています。
そんな状況で今後の収入や老後の生活に不安があるせいか、最近はお金を使うことが怖くなってきました。
ただ、振り返ってみると、子供の頃からお金に余裕のない生活をしてきたため、お金を使うこと自体に慣れていないのかもしれません。十分なお金がないまま50代を迎え、現在、多少の貯金はあるものの、使うことに抵抗を感じてしまいます。
友人と食事に行ったり、一緒に出かけたりすることも、心から楽しめません。誘われても、2回に1回は断ってしまいます。毎月の生活費はおおむね一定で、節約できるところは切り詰めています。友人との交際費や習い事にかかるお金も切り詰めの対象になってしまっています。
このままお金のことばかり気にして、人との関係を十分に築けないまま年齢を重ねていくことに、不安を感じています。
老後のお金を確保することは大切ですが、今の生活を楽しんだり、人とのつながりを持ったりすることも大切なのではないかと自問自答する日々です。
お金への不安とどのように向き合っていけばよいのでしょうか。こんな状態で、私の老後は大丈夫なのかと心配です。
回答
老後のお金を守ることと、今の生活を大切にすることは、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。 将来に必要なお金を具体的に把握し、そのうえで、安心して使える金額を決めてみましょう。
お金を使うのが怖いのは、将来を真剣に考えているから
長い間、お金に余裕のない生活を送ってきたのであれば、お金を使うことに慎重になるのは自然なことだと思います。
若い頃から節約を続けてきた人にとって、お金を使わずに手元に残しておくことは生存本能の現れなのかもしれません。そこに今回の退職が重なり、収入が減ったことで、これまで以上にお金を使うことが怖くなっているのかもしれません。
再就職先が見つかるかどうか、今後どのくらい収入を得られるのか、老後の生活費は足りるのか。こうした不安があると、たとえ少額の出費であっても「今、使ってしまって大丈夫だろうか」と考えてしまうのは当然です。
ここで少しだけ考えていただきたいのは、
お金を使わなければ安心できるとは限らない、ということです。
お金を使わずに貯蓄を守ることができても、そのために友人との付き合いを減らし、楽しみを我慢し続けていれば、今度は別の不安や寂しさが大きくなるかもしれません。
お金は、将来の生活を守るために必要なものです。同時に、今の生活を支え、人とのつながりや楽しみを得るためにも役立つものです。むやみに使うことでもなく、ひたすら節約することでもなく、自分にとって必要なお金の使い方を見つけたいものです。
老後に必要なお金を、具体的に把握してみましょう
お金への不安を和らげるために、まず取り組んでいただきたいのが、将来のお金を具体的な数字で整理することです。
すでに、相談者さんは現在の生活費については解像度高く把握されているようですので、将来必要となるお金についても解像度を上げてみましょう。ただ漠然と「老後のお金が足りなくなるかもしれない」と考えていると、どのくらい節約すれば安心できるのか、いつまで働く必要があるのかも見えてきません。
まずは、次のような項目を整理してみてください。
- 現在の貯蓄額: 預貯金など、今あるお金はいくらか。
- 毎月の生活費: 家賃や住宅費、食費、光熱費、保険料など、最低限必要な支出はいくらか。
- 今後の収入: 再就職した場合に見込める収入や、働き方を変えた場合の収入はいくらか。
- 老後の収入: ねんきん定期便や「ねんきんネット」で確認できる、将来の年金見込額はいくらか。
- 老後の支出: 年金生活に入った後、毎月どのくらいのお金が必要になりそうか。
相談者さんの場合は、今後の収入、老後の収入、老後の支出をシミュレーションしてみるのが良さそうです。
例えば、再就職後の収入が生活費を下回る場合には、貯蓄を毎月いくら取り崩すことになるのかを計算します。反対に、一定の収入が確保でき、当面の生活費にも余裕があるなら、必要以上に支出を恐れている可能性もあります。
今ある貯蓄額や今後の収入、住居費などによって、安心できる状況は人それぞれです。数字を整理した結果、節約を続ける必要が本当にあるのかもわかってくるでしょう。また、何がどのくらい不足しそうなのかがわかれば、対策を考えやすくなります。
交際費まで一律に切り詰める必要はありません
家計を見直す際には、支出をすべて同じように削るのではなく、必要性や自分にとっての価値を考えてみることをおすすめします。
例えば、あまり利用していないサービスや、なくても困らない支出を減らすことはできるでしょう。一方で、友人との食事や習い事は、単にお金を使うだけのものではありません。
人と話すことで気分転換ができたり、新しいことを学ぶことで生活に張り合いが生まれたりすることもあります。
特に、これから仕事や生活環境が変わる可能性がある時期には、仕事以外の人間関係や居場所を持っておくことにも意味があります。
だからといって、無理をして交際費を増やす必要はありません。
例えば、毎月の家計を確認したうえで、交際費や趣味に使う金額をあらかじめ決めておく方法があります。
「今月は3,000円まで」「友人との食事は月に1回」など、自分の家計に合ったルールを設けてみるのです。金額はあくまでも一例です。現在の収入や貯蓄状況に合わせて決めてください。
予算の範囲内であれば、お金を使った後に「こんなことに使ってしまってよかったのだろうか」と自分を責める必要はありません。
もし外食が負担になるなら、散歩をしたり、公園で話したり、自宅でお茶を飲んだりする方法もあります。お金をあまりかけなくても、人とのつながりを保つことはできます。
誘いをすべて断ること、反対に、すべて受け入れることを考えるのではなく、自分が安心して参加できる範囲を見つけることが重要です。
人とのつながりは、これからの人生を支えるもの
相談者さんは、お金のことが気になって友人との付き合いを控える一方で、人との関係を築けないまま年齢を重ねていくことにも不安を感じていらっしゃいます。
その不安は、これからの生活を考えるうえで大切な気づきだと思います。
老後の備えというと、貯蓄や年金、住まいなど、お金に関することに目が向きがちです。しかし、安心して暮らしていくためには、お金だけでなく、困ったときに相談できる相手や、気軽に話せる知人がいることも大切です。
もちろん、友人がいれば老後の問題がすべて解決するわけではありません。また、人付き合いを増やすこと自体を目標にする必要もありません。
それでも、日頃から誰かと会話をしたり、共通の趣味を楽しんだりすることは、生活に楽しみをもたらしてくれます。
今は失業中で、将来への不安が大きい時期です。無理に交際を増やす必要はありませんが、今ある人間関係まで手放してしまわないように、できる範囲でつながりを保ってみてはいかがでしょうか。
誘われたときに、お金のことが気になって断りたくなったら、「今の家計で本当に難しいのか、それとも使うこと自体が怖いのか」と、一度立ち止まって考えてみるのもよいと思います。
予算内で参加できるのであれば、時には楽しむことを優先してもよいのです。
これからの働き方も、正社員だけに限定しないで考える
相談者さんが書かれているように、再就職については、正社員として働くことだけを目標にしなくてもよいと思います。
もちろん、正社員として働き、安定した収入を得られるのであれば、それに越したことはないかもしれません。しかし、正社員での再就職が難しいと感じているのであれば、契約社員やパートなども含めて、働き方の選択肢を広げてみる方法もあります。
そして、雇用形態だけで判断するのではなく、どのくらいの収入があれば生活を維持できるのか、どのような働き方なら長く続けられるのかを考えることも重要です。
失業手当を受給している間に、ハローワークなどで求人や職業相談を利用し、自分の経験を生かせる仕事や、無理なく働ける仕事を探してみてください。
収入の見通しが少しずつ立てば、お金を使うことへの不安も変わってくる可能性があります。
また、老後の生活設計について自分だけで判断するのが難しい場合には、年金事務所や自治体の相談窓口などを利用するのも一つの方法です。家計や今後の働き方を整理することで、必要な備えが見えてくることもあります。
お金を守るだけでなく、今の自分のためにも使っていく
相談者さんは、若い頃からお金に余裕のない生活を送り、限られたお金を大切に使いながら、ここまで暮らしてこられたのだと思います。
その経験があるからこそ、お金を失うことへの不安が強くなっているのかもしれません。これまで身につけてきた節約の習慣は、決して悪いものではありません。
将来に備えてお金を残すことは大切です。しかし、将来のために今を我慢し続けた結果、楽しみや人とのつながりまで失ってしまったら、それもまた望んでいた暮らしとは違うものになるかもしれません。
まずは家計と将来の収支を整理し、無理のない範囲で「自分が使ってもよいお金」を決めてみてください。そして、そのお金を友人との食事や趣味など、自分が大切だと思うことに使ってみるのです。
少額ずつでも使うことに慣れていくうちに、お金を使うことへの抵抗感が少しずつ和らぐ可能性もあります。
もし、家計に余裕があると確認できても、お金を使うことへの恐怖が強く、日常生活や人間関係に大きな支障が出ているのであれば、カウンセリングなどで不安との向き合い方を相談することも考えてみてください。
53歳の今、将来のお金について考え、人とのつながりも大切にしたいと気づいていることは、これからの生活を整えるうえで大切な視点です。
お金を守ることだけを目標にするのではなく、お金を使いながら、どのような人生を送りたいのかも考えてみてください。
将来への備えと、今の生活の楽しみ。その両方を大切にできる、相談者さんなりのベストバランスを見つけられることを応援しています。

