【心の相談室】離婚・定年退職。ふとした瞬間に孤独を感じます

心の相談室

今回のお悩み

60歳の男性です。
6年前、55歳のときに、5歳年下の妻と離婚して以来、一人暮らしです。

これといった決定的な出来事があったわけではありません。私のお金の使い方や浪費癖、家庭内での振る舞い、お互いの親族への気の使い方など、結婚生活の中で小さな不満が少しずつ積み重なり、価値観の違いを埋められないまま年月が過ぎたことが原因だったのだと思います。
子どもはいませんでした。
ある日、妻は家を出ていき、その後はそれぞれ別々の生活をすることになりました。

当時は、これからどう生きていけばいいのかということを、それほど深く考えていなかったように思います。仕事があり、会社に行けば人と会い、同僚と話をする。休日には友人と会うこともありました。

ところが、昨年定年退職を迎え、状況が大きく変わりました。

毎日行く場所がなくなり、親もすでに亡くなっているので、帰る実家もありません。朝起きても、その日に誰かと話す予定があるわけでもありません。

それまで友人だと思っていた人たちとも、会社を辞めてからはほとんど付き合いがなくなりました。

考えてみれば、彼らが興味を持っていたのは「私自身」というより、有名企業に勤めていた私の肩書だったのかもしれません。会社を辞めた今、プライベートで付き合ってくれる人はほとんどいません。

現在、地元のミニバスケットボールの同好会に参加しています。週に一度程度は同好会活動で人と顔を合わせます。

それでも、特に親しい友人ができたわけではありません。気軽な挨拶や簡単な会話はしますが、悩みを相談したり、プライベートな話をできる友人はいません。

大型スーパーへ一人で買い物に行ったときや、同好会でみんなと一緒に活動しているときでさえ、ふとした瞬間に「自分は一人なんだ」と感じることがあります。

私は子どもの頃から、「人生の生きがいを見つけたい」と思うようなタイプではありませんでした。
ただ、毎日を楽しく過ごせれば、それでいいと思って生きてきました。
しかし、定年退職して一人で過ごすようになった今、その「楽しく生きる」ということが、わからなくなってしまったように感じます。

この先、何十年もこの生活が続くのかと思うと、世の中から自分だけが取り残されてしまったような気持ちになります。

私は、これからどうすればいいのでしょうか。

回答

「生きがい」を無理に探さなくてもいい

まずお伝えしたいのは、今感じている孤独は、決して珍しいものではないということです。

むしろ、相談者の方の場合、人生の大きな節目がいくつも重なった結果として、孤独を強く感じるようになったのではないでしょうか。

6年前の離婚。
そして昨年の定年退職。
さらに、ご両親も亡くなり、帰る実家もない。

これまで生活の中にあった「妻」「会社」「職場の人間関係」「親」といったつながりが、時間をかけて一つずつなくなっていったわけです。

それまで何となく人とつながっていた環境から、突然、一人で自分の時間を過ごす生活になれば、寂しさを感じるのは当然です。

ですから、「何か生きがいを見つけなければならない」と考えすぎなくてもいいと思います。

相談内容を拝見して感じるのは、相談者様が「人生の目的」を失ったというより、人とのつながりが一気に少なくなったことによって、日常の中の楽しさまで失われてしまったということです

「親友」を作る必要はない

相談者の方は、

「悩みを相談できる友人がいない」、「特に仲の良い友人がいない」ことを、
孤独の理由として挙げています。
もちろん、何でも話せる親しい友人がいることは素晴らしいことです。
ただ、60歳から新しい人生を始めるとき、いきなり「親友」を作ろうとする必要はありません。
むしろ最初は、もっと軽いつながりでいいのです。

たとえば、
「今日は暑いですね」、「この前の試合、面白かったですね」、「次はいつ参加しますか?」といった程度の会話で十分です。

一見すると、とても小さなことに思えるかもしれません。
しかし、人とのつながりというのは、こうした小さな会話の積み重ねから始まることがあります。

ミニバスケットボールの同好会に参加しているのは、とても良いことです。
今は「週に一度、顔を合わせるだけの人」でも、何度も顔を合わせているうちに、
「この人とは少し話しやすいな」
と感じる人と出会うかもしれません。

人間関係は、深さよりもまず「頻度」が大切な場合があります。

「所属する場所」を一つではなく、二つ、三つ持つ

定年退職後に孤独を感じる人に共通しているのが、「行く場所がなくなった」という感覚です。

会社員時代には、嫌でも会社へ行かなければなりませんでした。
そこには同僚がいて、上司がいて、取引先がいて、仕事上の会話があります。
定年退職すると、それが一気になくなります。
だからこそ、これからは「自分で行く場所を作る」ことが重要になります。

相談者様には、すでにスポーツという居場所があります。
これは大きな財産です。

週1回だけではなく、できればもう一つ、別の行き場所を作ってみてはいかがでしょうか。

ここで大切なのは、「楽しいかどうか」だけで選ばないことです。
「定期的に人と会えるか」も選ぶ基準にしてください。

最初はそれほど面白くなくても構いません。
「来週もあの人たちに会う」という予定があるだけで、生活に少し輪郭が生まれます。

「生きがい」ではなく「楽しみ」を一つずつ作る

相談者様は、
『ただ楽しく生きていければいい』と思って生きてきたと書かれています。

私は、この考え方は決して悪いものではないと思います。
人生に大きな使命や生きがいを持たなければならないわけではありません。
むしろ60歳以降は、「生きがい」という大げさな言葉を背負いすぎないほうがいい場合もあります。

「生きがいを見つけなければ」

と考えると、何か特別なものを探さなければならないように感じてしまいます。でも、

「来週はあの店に行ってみよう」「今度のバスケが楽しみだ」「帰りに大好物の〇〇を食べて帰ろう」

というような小さな楽しみなら、もっと簡単に作れます。

一人の時間を「孤独」だけにしない

そして、もう一つ大切なのが、一人で過ごす時間との付き合い方です。

大型スーパーで買い物をしているときに孤独を感じる、という相談者様の気持ちはよく分かります。

周囲には家族連れや夫婦、友人同士がいて、自分だけ一人で買い物をしているように感じてしまう。

しかし、一人で買い物をしていることと、「孤独な人生を送っていること」は同じではありません。

一人で映画を見る人もいます。

一人で旅行する人もいます。

一人で食事をする人もいます。

一人で暮らしながら、たくさんの人とつながっている人もいます。

逆に、家族と一緒に暮らしていても、孤独を感じる人はいます。

つまり、問題は「一人でいること」そのものではなく、自分の存在が誰かとつながっているという実感を持てるかどうかなのだと思います。

だからこそ、今後は、

「一人でいる時間をなくす」

のではなく、

「一人の時間」と「人とつながる時間」の両方を持つことを目指してみてください。

過去の人間関係を振り返りすぎない

相談者様は、会社を辞めたら友人が離れていったことについて、

「結局、会社の肩書に興味があっただけなのかもしれない」

と感じています。

もしかすると、そういう面もあったのかもしれません。

ただ、過去の人間関係を「本当の友人ではなかった」と結論づけてしまう必要もないと思います。

会社という共通の場所がなくなれば、付き合いが自然に減ることは珍しくありません。

それは相手が悪いわけでも、相談者様の価値がなくなったわけでもありません。

会社を離れたからこそ、これからは「会社」という肩書ではなく、一人の人間として付き合える関係を新しく作っていけばいいのです。

60歳という年齢は、新しい友人を作るには遅すぎる年齢ではありません。

むしろ、仕事上の立場や肩書から離れたからこそ、これからは「自分が何者か」ではなく、「一緒にいて心地よいか」で人と付き合えるようになるのではないでしょうか。

「取り残された」のではなく、人生のステージが変わった

相談者様は、

「このまま何十年も過ごすことを考えると、世の中から取り残されたような気持ちになる

と書いてくださっています。
でも、私は「取り残された」のではないと思います。
これまでの人生を支えていたものがなくなり、新しい次のステージに移ったばかりなのです。

定年退職をした直後は、会社という大きなコミュニティを失った喪失感が強くなります。
だからこそ、今から「これから30年をどう生きるか」まで考えなくていいのです。

まずは、「来週をどう過ごすか」を考えれば良いのです。

来週、人と会う予定を一つ作る。新しい場所へ一度行ってみる。
誰かと少し長く話してみる。
そして、一人で楽しめることを一つ見つける。
その積み重ねでいいのです。

60歳から先の人生は、新しいステージです。
新しいステージはまだ始まったばかり。
新しいステージでの毎日が少しだけ楽しみになる」ことを一つずつ増やしていけばいい。

それが、結果として「孤独ではない人生」につながっていくのではないでしょうか。

そしてもし、孤独感が長期間続き、眠れない、食欲がない、何をしても楽しくない、気分が落ち込んだまま戻らない、といった状態が続くのであれば、単なる「寂しさ」と決めつけず、心療内科や精神科などの専門家に相談することも選択肢にしてください。

どうか一人で抱え込まないでください。
人生の新しいステージ(後半)は、「大きな生きがい」を探すより、「小さなつながり」と「小さな楽しみ」を増やしていくことから始めましょう。

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