【心の相談室】母親に振り回され続ける私。81歳の母と、これからどう向き合えばいいのでしょうか

心の相談室

今回のお悩み

51歳の女性です。実母との関係について相談させてください。

私の母は、昔から自分の子どもにほとんど関心を持たない人でした。
私は幼いころから、ほとんど放任されて育ちました。小学生のころには、学校の先生から個別に呼び出され、「お母さんに髪の毛を切ってもらって」と言われたり、「お風呂に入って、お母さんに洗ってもらいなさい」と言われたりしたことがあります。

今思えば、当時の私はかなり身だしなみが整っていなかったのだと思います。
そんな家庭で育ったので、大人になって就職したときは、「これでやっと家を出られる」とほっとしました。

入社後、配属先が決まって一人暮らしを始めるまでの2~3か月間は実家から通っていましたが、その間、母から「家にお金を入れて」と言われました。
通勤が遠かったため、平日はほとんど家で食事をしていませんでしたが、それでも毎月数万円を入れました。

25歳を過ぎたころから、今度は母から毎日のように一人暮らしのアパートへ電話がかかってくるようになりました。
仕事で帰宅が遅いことも多かったので、ほとんどは留守番電話に録音されていました。

その内容は、
「早く結婚しなさい」
「25歳を過ぎて独身なんて、恥ずかしくて近所の友達に話せない」
「相手なんて誰でもいいから結婚しなさい」
といったものでした。

私が「結婚はまだしない。今は仕事をしたい」と言うと、
母は泣いて、「なんて恥ずかしい」と言いました。

その後、私は35歳で結婚しました。
結婚してから15年になりますが、母との関係は今も変わりません。
毎年、年末になると母から電話がかかってきます。

「今年は義実家に帰省するの?」
「うちには帰ってくるの?」

と聞かれます。

義実家はとても居心地がよく、夫婦で帰省することが多いのですが、私の実家には、あまり夫を連れて帰りたくありません。

母が夫にどのような態度を取るのか不安ですし、そもそも自分自身が実家にいることに居心地の悪さを感じるからです。

そのため、結婚してから15年間、夫婦で私の実家に帰省することはほとんどありませんでした。

すると毎年のように母から、
「義実家には帰省しているっていうじゃない」
「義実家には帰省できるのに、どうしてうちには帰ってこないの?」

と、怒りと涙の混じった電話がかかってきます。

そして先日、母から突然、
「家をリフォームするから同居してちょうだい」
と言われました。
「二世帯住宅に改築してもいい」
とも言われました。

もちろん、私は同居するつもりはありません。
「同居するつもりはないし、リフォーム代を負担するつもりもない」
とはっきり伝えたところ、母は泣きながら、
「謝りなさい」
と言ってきました。

私は一体何を謝ればいいのでしょうか。
母から何か言われるたびに、昔からずっと母の感情に振り回されてきたように感じます。
母が怒れば自分が悪いのではないかと思い、母が泣けば何とかしなければいけないような気持ちになります。
51歳になった今でも、母から電話が来ると気持ちが大きく揺さぶられます。
現在、母は81歳です。
高齢になった母に悲しい思いをさせるのはどうかと思います。
一方で、これ以上母の言うことに振り回される人生も送りたくありません。

私は母と、これからどのような距離感で付き合っていけばいいのでしょうか。
「母親なのだから大切にしなければ」と思う気持ちと、「もう母の感情に振り回されたくない」という気持ちの間で苦しんでいます。

回答

「母親だから」という理由だけで、あなたがお母さまの望みをかなえる必要はありません

長い間、お母さまの言葉や感情に振り回されてきたのですね。

相談文を読んでいて特に気になるのは、現在の同居問題そのものよりも、相談者さんが長い年月をかけて、「母が怒ったら、自分が悪い」「母が泣いたら、自分が何とかしなければ」と考えるようになっていることです。

お母さまの「謝りなさい」という言葉にも、それが表れているように思います。

しかし、まずしっかりと理解しておいてほしいことがあります。

お母さまが泣いたからといって、必ずしも相談者さんが悪いわけではありません。

お母さまが望んでいることを断った。

それだけです。

同居したくない。
リフォーム費用を負担したくない。

これらは、相談者さん自身の人生に関わる重要な選択です。
51歳になった今、自分がどこで誰と暮らすのかを自分で決めることは、決して親不孝ではありません。
むしろ、これからの人生を考えるうえで当然のことです。

「親を大切にする」と「親の言う通りにする」は違います

親が高齢になると、「親を大切にしなければ」「年齢を考えれば、今まで以上に面倒を見なければ」という気持ちが強くなるものです。

しかし、

親を大切にすることと、親の希望をすべて受け入れることは別です。

たとえば、
「同居はしないけれど、必要なときには連絡を取る」
「リフォーム費用は負担しないけれど、生活上の必要な手続きについては相談に乗る」
「年末に帰省は必ずしもしないけど、月に一度はこちらから電話する」
という関係も考えられます。

まず、「お母さまの感情」と「自分の責任」を切り分けてみてください

今回、相談者さんが最も苦しんでいるのは、お母さまの要求そのものではなく、要求を断ったときに生じるお母さまの感情なのではないでしょうか。

「同居したくない」と伝える。

  ↓

お母さまが泣く。

  ↓

「私が母を悲しませた」

  ↓

「私が悪いのではないか」

  ↓

「謝らなければいけないのではないか」

という流れになっているように見えます。

ここで、一度立ち止まってみましょう。

「お母さまが泣いた」という事実と、「私が悪い」という判断は、別のものです。

お母さまが悲しんだ。
それは事実かもしれません。
しかし、
お母さまの望みが実現困難であり、お母さまが悲しんだ責任まで、相談者さんが引き受ける必要はありません。

大人同士であれば、それぞれが自分の感情を引き受ける必要があります。
お母さまには「娘と同居したい」という希望がある。
相談者さんには「同居したくない」という希望がある。
どちらか一方だけが正しいわけではありません。

「謝ること」より「境界線を作ること」が大切です

今回、「何を謝ればいいのでしょう」と書かれています。
私は、貴方が謝る必要はないと思います。

もちろん、言い方がきつかったなど、相談者さん自身に反省する点があるのであれば、その部分について謝ることはできます。

ですが、
「同居しないこと」
「リフォーム費用を負担しないこと」
そのものについて謝る必要はありません。

たとえば、
「お母さんがそうしたいと思っていることは分かった。でも、私は夫との今の生活を大切にしたいから、同居するつもりはありません」
「リフォームについても、私も夫も費用を負担できません」
「このことについて何度話しても、私の考えは変わりません」

と伝える。そして、それ以上の説明を延々としないことです。
親子関係がこじれていると、こちらが丁寧に説明すればするほど、相手が「そこを説得すれば考えを変えられる」と考えてしまうことがあります。

電話に出ないという選択もあります

毎年の年末にクレームのような電話がかかってきて、そのたびに精神的に疲弊しているのであれば、電話の取り方を変えることも考えてみてください。

たとえば、電話が来てもすぐには出ない。
留守番電話にしておき、落ち着いてから聞く。
必要な内容だけ折り返す。

同じ話を繰り返される場合は、
「その話については前にも伝えた通りです。私の考えは変わりません」
とだけ繰り返す。

それでも怒鳴る、責める、泣いて要求するという状態が続くなら、
「今日はこれ以上話してもお互いにつらくなるから、ここで切るね」
と電話を終えてもいいのです。

これは冷たい態度ではありません。相談者さんが、ご自身の心を守るための境界線です。

実家に帰らないことは、母親を捨てることではありません

相談者さんは、夫を実家に連れて帰ることに抵抗を感じています。
それも無理のないことだと思います。
「結婚したのだから夫を連れて実家に帰らなければならない」
という決まりはありません。

義実家に帰ることと、自分の実家に帰ることを同じにする必要もありません。

夫婦にとって心地よい場所へ帰省する。
実家には一人で短時間訪問する。
ホテルなど別の場所で母親と会う。
外食だけ一緒にする。
連絡は電話やメールで済ませる。

こうした方法でも親子のつながりは保てます。

そして、幼いころの自分を責めないでください

今回の相談で、もう一つ大切にしてほしいことがあります。
小学生のころ、先生から「髪を切って」「お風呂に入って」と言われていたご自身のことです。

当時の相談者さんは、まだ子どもです。
自分で親を選ぶことも、自分で生活環境を変えることもできません。
もし十分な身の回りの世話をしてもらえなかったとしても、それは子どもだった相談者さんの責任ではありません。

そして、大人になってからも、母親から「結婚しろ」「独身では恥ずかしい」と言われ続けた。
その後、結婚してからは「義実家には帰るのに、なぜ自分のところには帰ってこないのか」と責められる。
さらに現在は「同居しろ」と要求されている。

こうして振り返ると、相談者さんは長い間、お母さまの期待や感情に合わせることを求められてきたのかもしれません。

離れて暮らしている今になっても、「母が怒っている。どうしよう」と感じるのは、現在の出来事だけが原因ではないのでしょう。

子どものころから身についた「母を怒らせてはいけない」という感覚が、今も残っているのかもしれません。

これからは「母を変える」のではなく「自分の対応を変える」

81歳のお母さまを、今から別人のように変えることは難しいでしょう。

「なぜ私をもっと大切にしてくれなかったのか」
「なぜいつも私を責めるのか」
「なぜいつも私を支配しようとするのか」
「なぜ普通の人間関係を築けないのか」

そう思う気持ちは、とても自然です。
ただ、そこに答えを求め続けると、これからもお母さまの反応に自分の気持ちを左右されてしまいます。

ですから、これからは少し基準を変えてみることを考えてみてください。
「母がどう反応するか」ではなく、「私はどうしたいのか」ということです。

母が怒っても、私は同居しない。
母が泣いても、リフォーム費用は負担しない。
母が「親不孝」と言っても、私は自分の家庭を大切にする。
母と会うことが自分にとってつらいなら、会う時間や場所を調整する。

それでも、母が高齢になって困ったときには、自分にできる範囲で必要な支援を考える。
そんな関係だって考えられます。

「親子だから仲良くしなければ」という呪縛から離れてもいい

親子だからといって、必ずしも相性がいいとは限りません。
親子だからといって、一緒に暮らさなければならないわけでもありません。
親子だからといって、何でも許さなければならないわけでもありません。

そして、
親子だからといって、必ずしも心地よい関係を築けるとは限りません。

これを認めることは、親を見捨てることではありません。
むしろ、これからも関係を続けていくためには、適切な距離を置くことが必要な場合があります。
近すぎることで傷つけ合う親子なら、少し離れたほうがいい。

電話の回数を減らす。
会う時間を短くする。

それでいいのです。

相談者さんは、これまで長い時間を、お母さまの期待や感情に応えようとして生きてきたのではないでしょうか。
そうだとしても、これからの人生まで、お母さまの機嫌を基準にする必要はありません。

「母を大切にすること」と「母の人生を背負うこと」を分けて考えてみてください。

そして、お願いです。
お母さまが泣いたときに、すぐに「私が悪い」と考えないようにしてください。

「お母さんは悲しいんだな。でも、私は私の人生を選ぶ」
そう考えてみてください。

お母さまの感情を否定する必要はありません。
その感情まで自分の責任にしないこと。

それが、長年続いてきた「母に振り回される関係」から少しずつ抜け出すための、最初の一歩になるのではないでしょうか。

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